セールスフォースのコアバリューを支える全社員向け語学研修プログラム

企業のグローバル化が進む現代では、英語を学習することの重要度が増してきています。英語力を伸ばせば、よりさまざまなビジネスの場で活躍することができます。そんな中、大規模に英語学習を取り入れ、大きな成功を収めているのが、株式会社セールスフォース・ジャパンです。取り入れたのはgoFLUENTの英語学習プログラム「ランゲージ・アカデミー」。そのチャレンジと具体的な成果について、株式会社セールスフォース・ジャパン タレント・組織開発ディレクターの八幡 誠氏と、慶應義塾大学大学院理工学研究科 特任教授の小杉 俊哉氏にお話しいただきました。

<運用ポイント>

英語力を昇格の条件に>>測定材料の一つに「goFLUENTレベルチェック」を導入

全社員対象>>すべての社員が等しく受講できる環境

コミュニティの立ち上げ>>社員の自発的な英語学習を促進

コアバリューを支える、セールスフォースのリーダーシップ開発

八幡氏:1999年3月にサンフランシスコで創業したセールスフォースは、今年で創業から23年が経ち、社員数は直近で約75,000人を超えています。セールスフォース・ジャパンは2000年4月、セールスフォース初の海外拠点として設立され、現在では4,000人弱の規模となりました。

 2021年上半期には世界のCRMアプリケーション売上の市場シェアで1位を獲得しており、他の主要なテック企業と比較しても大きな成長を続けながら、高いプレゼンスを発揮しています。このように、当社のビジネスや我々の取り組みについて評価・注目をいただいていますが、その根幹には、セールスフォースが最も重要視する5つのコアバリュー、「信頼」「カスタマーサクセス」「イノベーション」「平等」「サステナビリティ」があります。我々「エンプロイーサクセス部門」(セールスフォースにおける人事部門の呼称)の役割はこれらのバリューに基づくカルチャーを実現する社員の成功を支援し、またそのエンゲージメントを高めることであり、リーダーシップ開発の領域においてもそれの考え方は一貫しています。カルチャーがリーダーシップを定義し、またリーダーシップがカルチャーを推進する、そのサイクルにより継続的な成果が実現するという考え方のもと、階層別のリーダーシッププログラムに加え、コーチング、チーミング、リーダーズコミュニティ等を提供していくことで、リーダーたちの行動変容やスキルの向上による組織力の向上を図ってきました。

小杉氏:貴重なお話ありがとうございます。質問なのですが、セールスフォースの考える「リーダーシップ」について教えていただけますか?

八幡氏:リーダーシップは、シニアレベルのエクゼクティブや部下を持つマネージャーに限らず、例えば部下を持たない社員でも必要なスキルであると考えています。優れたリーダーはどこからでも生まれる可能性があり、最も高い業績を上げている人材だけに焦点を当てるのではなく、平等の観点でプログラムへのアクセスを担保する必要があります。また、優れたリーダーは、3つのことに秀でていると思っています。それは、「優れたチームを作ること」、「一緒に働きたいと思われる人材である」こと、そして「共に成果を出すこと」です。

選抜式ではない、全社員向けの英語学習プログラムを導入

八幡氏:昨年度のリーダーシップ開発プログラムへの参加者数はグローバルで7,600名を超えましたが、それでも全社員の10%程度に留まっていました。これには、今まで実施していたプログラムが、限られた社員のみが受講できるノミネーション方式であったためです。そこで、この2月の新年度からスタートしたのが「Great Leader Pathways」というリーダーシップ開発プログラムです。選抜ではなく、希望する社員全員にそれぞれのリーダーシップステージに合わせた数カ月間のライブ学習・自己学習・コーチング・アセスメント・メンタリングなどを組み合わせて提供します。テクノロジーを最大限活用した学習ジャーニーにより、スケーラブルに人材育成を支援するのが狙いです。

英語プログラムは日本で独自に取り組んでいるもので、こちらも希望する社員全員が利用可能です。その内容はDevelopment (学習支援)+ Measurement(測定) + Community(コミュニティ)の三つで構成されています。Developmentの一つには、goFLUENTのランゲージ・アカデミーを導入し、日本と韓国の社員に向けたe-Learningリソースやバーチャルレッスン、オンラインでの1on1など、多くのサポートをお願いしています。Measurement においては、2021年2月より一定以上の職位に対して英語力を昇格の条件とする制度を導入しました。英語力の測定の際は、TOEIC IPの他に「goFLUENTレベルチェック」の結果を参照しています。Communityとしては、英語学習意欲の高い社員が社内のチャットツールで英語学習のヒントを共有する取り組みや、会議を英語で行うチャレンジなどの評価する制度 (英語チャンピオン)が挙げられます。

昨年度の実績を具体的な数字で見ていくと、社内英語学校のレッスン回数は延べ2000回以上、1on1コーチによるレッスンも1000回以上行われています。goFLUENTレベルチェックも約2000名が受講しており、自分がどのレベルにいるかをチェックし英語学習に役立てています。

 こうして培われた社員の英語力は、グローバルのチームや他のリージョンとの連携を取る際や、地域横断プロジェクトへの参加など、様々なビジネスシーンにおいて実際に生かされています。また、多くのリソースを必要とするローカライゼーションを減らすことや、タレントマネジメントの観点では他地域との人材交流にも役立っています。

英語学習プログラムの実施状況(2022年5月現在)

〇ランゲージ・アカデミー(自己学習&レベル診断)

・ 対象:全従業員

・ 登録者数:約2,700

・ アクティブ:1,200

・ アクティブ学習時間:平均13.1時間

〇ライブトレーニング(1on1

・ 対象:選抜者

・ 登録者数:約200

・ 総レッスン時間:2,159時間

英語学習のモチベーションは、企業が支える

 

小杉氏:去年から英語のスキルレベルを社内の昇格要件にされたということですが、実際、昇格のために求められる英語のレベルはどの程度なのでしょうか?

八幡氏:一般的な日本の企業と比較して、我々の基準が飛び抜けて高いということはないと思います。というのも、英語を昇格の要件として入れてはいますが、実際にどれだけの人が業務で日常的に英語を使うのかという現実的な視点があります。我々セールスフォース・ジャパンは日本法人ですので、日々の仕事で営業を行っている相手も基本的にすべて日本のお客様です。営業担当は日本のお客様と対面している限りは英語を使う必要性は低く、業務に必要となる製品やソリューションの知識、営業に関わるインサイトなどは翻訳され、日本語で提供されています。私のようにグローバルなチームに所属している場合はまったく別ですが、いずれにしてもきっかけを用意しなければ、英語を学習しない人は本当にしません。ですので、全体の底上げのためにこの昇格要件を導入したといってもいいかもしれません。

 小杉氏:なるほど。ですが日本法人である以上、英語を必要とする人は一部であって、それでいて英語のスキルを全社に展開しているということは、日本のお客様を担当している営業の方などからは「なぜ英語を学ばなければならないのか?」という意見もあるのではないでしょうか?

 八幡氏:正直なところ、そう思っている人も多いと思います。ですが一方で、「今はこれでいいかもしれないが、ゆくゆくはグローバルなセールスフォースの一員としてのスキルを伸ばしていかなければ、その先がない」という、将来を見据えたときの危機意識があり、この点は日本のシニアリーダーシップチームとも完全に共有されています。

 小杉氏:それだけ英語の習得を重要視してらっしゃるということですね。実際、外資系にいて情報の8割は英語であるという話もありましたが、海外の方とのコミュニケーション、人脈作りという観点からも、やはり英語というツールがないと不便ですよね。

 八幡氏:そうですね。グローバル企業であるセールスフォースならではの海外との人脈や知見、情報等は、英語力があって初めて得られるものですが、その実感を持てるか持てないかというのは仕事によっても変わってくると思います。営業担当の仕事は、目の前にいる日本のお客様に相対していくことですので、英語学習まで正直気が回らないこともあります。そういった意味でも、英語学習のモチベーションの高い人の存在は重要だと思っています。このような体系的な英語学習プログラムを導入した後、ありがたいことに一部の社員が英語学習に関するセッションを自ら社内で開催したり、会議を英語で行ったりするようになったり、また社内のコミュニケーションプラットフォームであるSlack上で英語学習のTipsを共有したりするなど、良いモメンタムも生まれてきています。

小杉氏:自発的に活動されている方々のモチベーションは、どのようなところにあるとお考えでしょうか?

八幡氏:最初は我々が後押しする必要があると考えています。英語プログラムに積極的に参加している社員を見つけ、その方の知見や経験を全体に共有するような場を用意するなど、きっかけを我々が準備したりもしました。モチベーションの向上は会社がただプログラムを押し付けるのではなく、オンラインコンテンツやライブレッスンなど、様々な学習プラットフォームが整った環境、そしてアクティブに頑張っている人がいる環境が組み合わさって、はじめて成り立つものだと思います。

小杉氏:そうですよね。受講後のフォローアップには、そういったサポートも含めているということでしょうか。

八幡氏:はい。英語学習の意欲が高い社員はライブトレーニングも受講できますし、社内のインハウスの英語コーチとも連携して、最適な英語学習を支援するようなサポートをしています。こういった取り組みを評価いただき、2019年にはHCMエクセレンス・アワード2019というグローバルな賞において、ブランドン・ホール・グループから「ベスト・ユニーク/イノベーティブ・ラーニング&デベロップメント・プログラム」部門で銀賞を受賞しました。

これからのグローバルな活躍を見据えて

八幡氏:コロナ禍で以前よりバーチャルな環境での仕事をする機会が増え、今まで以上に地域を跨いだつながりが持ちやすくなりました。今後、英語を必要とする業務はさらに増えていくでしょう。当社の体系的な英語学習プログラムを活用して英語力を底上げし、海外との繋がりの強化・人脈作りや本社への異動など、社員のより一層グローバルなキャリア形成を期待しています。

<企業情報>

株式会社セールスフォース・ジャパン

東京オフィス所在地:〒100-0005 東京都千代田区丸の内1-1-3 日本生命丸の内ガーデンタワー(Salesforce Tower)

事業内容:クラウドアプリケーション及びクラウドプラットフォームの提供

株式会社セールスフォース・ジャパン タレント・組織開発ディレクター
八幡 誠 氏

プロフィール:日系素材メーカーを経て、2003年に日産自動車に入社。R&D部門人事、北米日産会社での勤務の後、グローバル本社にて日産グローバル及びルノー・日産アライアンスに関わる主要な人事の役割を歴任。2018年に日本マイクロソフトに移籍し、Go-To-Market組織のHRBPを担当した後、2020年8月にセールスフォース・ドットコムに移り、現在は日本/韓国リージョンにおけるタレントエクスペリエンス(TX)のチームをリードしている。20年を超える異文化環境での実務経験、自動車及びテック業界におけるグローバル・ローカル組織での経験を経て、企業文化の変革と浸透、ビジネスの成長、及び社員エクスペリエンスにおける人事部門の果たす役割について実践的かつ深い知見を有する。

慶應義塾大学大学院 理工学研究科特任教授
小杉 俊哉 氏

プロフィール: 早稲田大学法学部卒業後、NECに入社。マサチューセッツ工科大学スローン経営大学院修士課程修了。マッキンゼー、ユニデン人事総務部長、アップル人事総務本部長を歴任後、独立。慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科准教授などを経て現職。ビジネス・ブレークスルー大学経営大学院客員教授、ふくおかフィナンシャルグループ・福岡銀行、エスペックなどの社外取締役を兼任。著書に『リーダーシップ3.0』、『起業家のように企業で働く』、『職業としてのプロ経営者』など多数。

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