去る2020年10月28日、デジタル研修への移行と取り組み事例をテーマに株式会社電通人事部シニアディレクターのお二方をお招きし「電通が取り組む、社員の育成・成長支援におけるデジタルトランスフォーメーション」を開催いたしました。今回130名ほどお申込みをいただき、大盛況のうちに終了いたしました。ご参加いただけなかった方、ご参加いただいた方の振り返り用として当日のウェビナーの状況を少しでもお届けできればと思い、ブログを執筆しましたので共有いたします。

今回のウェビナーは、下記の4つのテーマで進行を進めました。各セッションで話された内容を記します。

  1. 「対面式研修からデジタルへ移行するための5つのステップ(goFLUENT)」
  2. 「学びへのモチベーション&カルチャー(電通様)」
  3. 「デジタルマーケティング研修 ”NEXTGEN”(電通様)」
  4. Q&Aセッション

「対面式研修からデジタルへ移行するための5つのステップ」
goFLUENT株式会社 ゼネラルマネジャー 大野 孝司

「なぜ今対面式からデジタルに移行するのか?」コロナウイルスによるパンデミックの状況もあり、ニーズはデジタルラーニングへ。対面式研修とオンライン研修はそれぞれ特徴があり、対面式は「人とのつながり」、オンラインは「柔軟性、パーソナライズ性」というところが得意。どちらも共通テーマとして「英語をマスターしたい」という目的は共通しているが、どちらがよいということではなく、「どちらが現状にフィットする最善の手段なのか」、将来を見つめて考えることが重要だと伝えました。

それから、対面式研修からデジタルへ移行するための以下の5つのステップについて説明。

  1.  研修のニーズ分析を行う
  2. コンテンツのキュレーションにより研修と業務との関連性を高める
  3. 学習の「人間的側面」を忘れない
  4. マーケティング担当者になったつもりで考える
  5. プログラムの結果と効果を評価する

デジタルラーニングへの移行へのプロセスとしては、まずは到達したい目標を各部門のマネジャー、部門のトップと協議し、期待する結果期待する結果を決定。目標が決まれば、研修の対象者のスキルレベルを把握。評価については、本人だけでなく、上司を関与させること、さらには、研修の目的、会社の戦略、人事戦略それから成長の戦略がリンクしていることが非常に重要だと大野は述べました。

学習コンテンツにおいては、学習者一人ひとりの状況に応じた適切なコンテンツを選ぶことが重要。また、研修で取り扱うテーマ、eラーニングのコンテンツは、自社の業種や自分の業務に関連していたほうがよく、さらに理想的なのは、自社のビジネストレンドや時事ニュースを取り入れたり、会社独自の語彙集や英語のマテリアルをプログラムに組み込むと効果的だと述べました。

また、人との触れ合いは、対面式研修のみならず、デジタルラーニングにおいても取り入れることができ、デジタルだからこそ取り入れるべきもの。なぜなら、人間は弱く、学習できる「仲間」が必要だから。eラーニングであっても、リアルな講師とのZoom等を使った対面レッスンを組み入れることがおすすめ。競争を促したり、成功事例を全従業員向けに発信することもラーニングカルチャーを創る意味で大切だと伝えました。

最後の結果については、goFLUENTでも取り入れている研修評価方法(カークパトリックの学習モデル)をご紹介。研修プログラムを戦略的に行うことが極めて重要で、誰に研修を与えるのか。その人材がどんな仕事・役割を担っていくのか。個人のスキルアップがその後のキャリアにつながれば、それはチームの成長、そして企業の成長につながるのだと伝えました。

「企業は成長し続けなくてはなりません。そして、個人は学び続けなければなりません。歩みを止めれば、成長が止まります。今日のコロナ禍においても、学びや成長を止めてはならないと考えています。」と大野は最後に締めくくりました。

~LMS×オンラインプログラムで強化する~「学びへのモチベーション&カルチャー」創りへの取り組み
株式会社電通 キャリア・デザイン局 人材開発担当 シニアディレクター 黒岩 乙水(いつみ)様

「INPUT! 365」という全社員の新たな「学び」と「成長」をサポートする さまざまな仕組みやコンテンツ・場づくりをする取り組みを2019年5月より始動。それまで、社員の成長は本人と現場に委ねていたが、社員間の経験と学習機会に格差が出てきており、非連続といわれるビジネス環境に対応できない状況が続き、社員が“学び”の時間を増やし、仕事に向き合いながらも自らの成長サイクルをまわしていけるよう「INPUT! 365」を始動した経緯があるそうです。

500講座を超えるeラーニングが格納され外部の学びのプラットフォームにもアクセス可能な「INPUT! Channel」、日々の仕事に活かせる知識を深める月1~2回開催されるLIVEセミナー「INPUT! Hour(開催後INPUT! Channelにも格納)」、自分らしいキャリアプランを見つめなおす場を提供する「Career INPUT!」、電通の未来とそれに向けた学びを発見することを目指す研修「INPUT!未来構想キャンプ」、マネージャー向けに組織の経営者としてラインマネジメント職に必要な知識やマインドセットをするプログラム「電通マネジメントプログラム INPUT!」、インナー(社内)コミュニケーション「INPUT! 365 NEWS」など様々な取り組みご紹介いただきました。

その中で、「INPUT! Channel」はLMSであるSabaクラウドを使用して社内各部門や社外からのラーニングコンテンツも集約しているとのことでした。ラーニングコンテンツや集合型のプログラム、社員の視聴状況や受講状況も一元管理しているのです。

2019年コロナ前より、オンライン学習環境を整備・導入していた結果、コロナ下のリモート環境へ移行しても、社員の学びの環境を止めず、むしろ学びを活発化させることができ、オンライン学習が促進されているとのことでした。

数値的な結果としては、「INPUT! Channel」のユニークユーザー数が2020年の6月は同年3月に比べて1.5倍ほどアップ、9月もユーザー数が定着しているとのことでした。何よりも大きい効果を感じたのは、全社員向けのアンケートにおいて、60%近くの回答者が「この1年で“学び”の時間が増えた」と回答した結果とのこと。

「コロナ前から開始したオンライン学習整備とそれを促進させるインナーコミュニケーションでオンライン学習環境が学びの意識を高め、自分が好きなときに・必要とする“学び”を集中して学習するカルチャー醸成ができている」と考えていると黒岩様は締めくくりました。

「デジタルマーケティング研修 ”NEXTGEN”」
株式会社電通 人事局 グローバル人財育成担当 シニアディレクター 野上 健次様

グローバル・プレーヤー向け育成プログラム「NEXTGEN」についてご紹介いただきました。電通様では、「国内外問わずせ専門領域において多種多様な文化や国籍で構成するチームの一員として能力を発揮できる人財」をグローバル・プレーヤーと定義しています。

「NEXTGEN」とは、Googleと電通グループ会社のi-prospect社が共同開発したオンラインデジタルマーケティングコース。すべて英語、世界中のグループ会社のメンバーととともに講義、ケーススタディ、グループワークを通して学習を行う。約1ヶ月に1テーマを5ヶ月~6ケ月かけてデジタルマーケティングについて学ぶプログラムだそうです。今年は世界20ヵ国、264名の社員が参加。毎週水曜に時差も考慮して1日2回ライブを行っているとのこと。

実施後のアンケート結果では、「92%が参加してよかった」と回答、「89%が学んだことを業務で活かせる」と回答、「84%が受講を他の人にすすめたい」と回答したとのこと。

「コロナの状況にもかかわらず、影響を受けずに参加者が常に期待感をもって6ヶ月継続できた。パンデミックでデジタルマーケティングの重要性が再認識されている中、今後のオンライン研修の道筋がたてられたのではないか。本プログラムを頑張ってきた人達にさらにNEXTステップとしてレベルを上げたプログラムを用意したり、キャリアプランとして海外駐在の候補にするといったことなどを組み込んでいきたい。」と野上様は締めくくりました。

Q&Aセッションでの質問と回答

質問:社員育成体系の中で「インプット」と「アウトプット」のバランスはどのように考えておられますか。またアウトプットの場をどのように設定されていますか?
回答:「アウトプット」の場は、あくまで実務/仕事の場ととらえております。「インプット」はあくまで7:2:1の法則の「1」という位置づけです。弊社のOJTは、かなりしっかりとした環境の中で推進されております。ただ足りなかった「インプット」の環境であり行動促進を可能とする機会や施策を再設計いたしました。

質問:Input Channelは社員から利用料は徴収されますか?
回答:
無料です。全社員に向けて提供しているコンテンツです。誰もがアクセスできるプラットフォームになっています。

質問:研修の効果測定はどのようにされていますか?
回答:
大きく3つの測定結果を統合してみています。1つ目は、各プログラムの満足度や日々の仕事への活用度をプログラム受講後のアンケートで把握すること。2つ目は、成長サイクルを自律的に回せているかを測るために全社員対象の意識調査に項目を入れ測定していること。3つ目は、「学び」の時間の増加を本人の実感値と勤務登録を合わせて測ること。今後さらには、中期的な成長を捉えられるデータでのトラッキングも実施していきます。

質問:若手社員の育成はOJT、自己啓発、OffJT、e-ラーニングどの程度の割合で実施されていますか?
回答:7:2:1の法則にのっとっています。弊社は「人からの影響」がより成長を加速させる傾向にもあるため、6:3:1が理想と捉えています。今までOJTばかりでしたが、今はOJTの効果をより高めるため、人からの影響である「2」であり「3」をより充実し社員による格差を減らせるよう配属先でのトレーナーを支援するプログラムも導入しています。また、「1」もしっかりと機能するように、上長と1on1を通じてOffJTとしてのeラーニング、セミナー受講、自己啓発を推進できるようにしています。

質問:Sabaクラウドで多種多様なプログラムを提供されているとのことですが、その内容は、どのような観点から選定しているのでしょうか。会社の求める人材像に照らした内容の他、社員からのニーズも拾い上げていたりしますか?
回答:全社としての事業への貢献を意識し全社員への成長支援の観点に立つ“学び”については、キャリア・デザイン局で判断して提供しています。各部門による、スキルや知識の取得は、各部門ごとに提供する方針にあります。ただし、各部門に閉じないよう、各部門の担当者とキャリア・デザイン局が連携し、各部門における“学び”も全社共有できるようSABAクラウド=INPUT!Channelで全社員が閲覧可能な仕組みにしております。 また、今後はより社員からのニーズが反映できる“学び”の提供にも取り組みます。

質問:研修参加と個人の評価は紐づいていますか?
回答:年間評価には紐づいておりません。

質問:NEXTGENの内容を現場管理者の方へ共有されたりされるのでしょうか?NEXTGENで学んだことを現場で実践するためには現場管理者もNEXTGENの内容を把握していることが望ましいと考えます。共有されている場合は、どのくらいの時間、どのような方法で共有されるのでしょうか?
回答:応募時にもプログラムの詳細の説明を行いました。プログラム期間中は、遅れが出ている人などのフォローアップにも協力を頂きました。今後、プログラムの報告会を企画しています。

質問:NEXTGENは手上げですか、選抜ですか。また、相互評価結果はオープンに参加者がみれますか。
回答:選抜式のプログラムです。現状は、相互評価の結果は見れませんが、公開していくつもりです。

開催レポートは以上になります。今回の録画ビデオもご用意しており、こちらよりご視聴いただけます。

今回電通の黒岩様と野上様には、惜しみなく 社員の学びに関する取り組みについてご紹介いただきました。この場をお借りして感謝申し上げます。goFLUENTでは、今後も企業の人事部門や研修・育成ご担当の方向けにこういった有益な情報を積極的にお伝えして参ります。今後ともよろしくお願いいたします。

出口佳保里 (Kaori Deguchi)
goFLUENT株式会社 マーケティングマネジャー

大学卒業後、外資系IT業界で9年ほどデジタル/オフラインマーケティングに従事。
2020年7月にgoFLUENT株式会社に入社。goFLUENTの英語研修プログラムを通して
お客様のグローバル人材育成を支援できるよう邁進中。